ひみつのせり畑へ / column

ひみつのせり畑へ / column

5月のはじまり、伊豆の別宅。またひとつ、季節のとっておきを見つけた。360度、どこに目を向けても山の緑がまぶしい初夏のとっておき。

ひみつの場所を教えてくれたのは、ご近所のハツエさん。

飼い猫のチコも一緒に。というか、正確にはチコが教えてくれたとっておきの場所らしい。

チコのお気に入りの木。すぐさま木登りするチコ。

その木の下に広がるのは、野生の「せり」!なんと私の大好物のせりが一面に。でもこの葉っぱが野せりだなんて、自分じゃ絶対に気づけなかった。ハツエさん、すごい。

せりの茂みの中に、おたまじゃくしが泳いでるのを見つけた。そっか、せりって、綺麗な沢辺に茂る草なのね。ワサビみたい。味も似ているな。

ぴかぴかのライトグリーンは生まれたての新芽の証。はつえさんが、摘んでは食べて、を繰り返してくれているから、どんどん新芽が生えてくるそう。スーパーで見かける濃い緑のせりとは全くの別物。

ちなみにこれは川辺に咲くせりの花。摘まずに野放しにしていたら、こうして花が咲いて、葉っぱは硬くなり食べられなくなる。

せりだけじゃなく、クレソンも!ハツエさんにならって、新芽を摘む。

 「これスーパーで買ったらいくらになる?」なんてはしゃぎながら、みんなでたっぷりセリを摘む。というか、都会のスーパーではこんなに新鮮な野せりに出会うことすら難しい。

ザルから溢れるほどに、欲張っちゃった。でも大丈夫、またすぐ生えるから。「5月の伊豆は、野せり食べ放題」と心の中にメモ。

新鮮なセリは、ダイレクトに味わいたいからまずはサラダに。そうだ、大好きなニューサマーオレンジと合わせよう。

 

私のいちばん好きな柑橘、ニューサマー。レモンのように酸っぱく、でも苦味がは無くて白いワタまでおいしく食べられる。甘みが少ないからポンカンほどの人気者ではないけれど、私はこの柑橘がなぜだか一番好き。

 皮ごとカットして、セリと合えよう。爽やかな初夏の香りいっぱい。ごく少量のオリーブオイルと塩レモンとあえたら、それでもう味付けはじゅうぶん。キャロットケーキ用にしりしりして余った、春にんじんも入れたら、今この瞬間のときめきをたっぷり散らした、とびきりサラダの出来上がり。

キャロットケーキはこんな焼き上がり。おばあちゃんが生きていた頃の古いオーブンだから、火力が弱くてちょっと膨らみは少ないけれど、スパイスケーキミックスで簡単に焼けた。(我ながらいい商品を作った)にんじんはもちろん、新鮮な地のもの、たっぷり。

清々しい田舎のキッチンでは、スパイスの香りがいつもより一層際立つ。伊豆にいることを忘れるような香り。目を閉じたら、ロンドンのカフェにいるみたい。正直なところ、数年前まで、田舎に来ると自然に溶け込む心地よさを感じる一方で、都会的な味やカフェが恋しくなるというストレスも感じていた。悲しきミーハーな都会人。けれど、自分好みのキャロットケーキを上手に焼けるようになって、そんなストレスがなくなったこの頃。心の底から自然の贅沢を満喫できる、田舎を愛せる。自分の中のこの小さな成長が密かに嬉しい。

ハツエさんが言った。「田舎に住んでると誰も楽しませてくれないから自分で楽しみを作らなくっちゃ」。なんて言葉なんだろう。まいにち移りゆく自然に目を向け、小さな変化や発見にときめきを持ち続けるハツエさんとの出会いで、また一つ、歳を重ねることに前向きになれた。いつかは私もこうやってこの土地で暮らすのかな?見えない未来って愛しいかも。urara

 

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