すてきな結婚式

すてきな結婚式

すてきな夫婦のすてきな結婚式。

2010年7月7日。渋谷区役所に婚姻届を出した私たちは浮かれていた。記念写真をfacebookにアップして、たくさんの人の祝福を受けた。いわゆる結婚ハイ。いまだ人生であれほどハイになることはないだろう。今、冷静にあの日の2人を見つめるとなんと未熟で無知な2人の若者なんだ。

深く考えることなく、夫の姓に名前を変えることを選んだ。

結婚式ではウェディングプランナーのすすめで、私は同身長の夫よりも背が高くならないようヒールがない靴を履き、夫は上底の靴を履いた。

私たちは何の疑いもなく、「すてきな夫婦」の型にはまることを提案され、その提案を受け入れた。

結婚式はお決まりの定番の流れに沿って、一通り。招待状のデザインや衣装にこだわることに過剰なエネルギーを注いでいたから来客への配慮は足りなかったと思う。若かったからどうか、許して欲しい。はっきり言って、今アルバムを開くのも嫌なくらいダサい、痛い結婚式だ。

あれから14年。もしも今、同じ提案をされたらどうするか?

「妻よりも少し背の高い、包容力のある夫らしさ」

「夫よりも少し背の低い、控えめな妻らしさ」

そんなクラシカルな夫婦像を演じることを提案されたら?ジェンダーバイアスとルッキズムの押し付け大事件。本社に電話する。

結婚、妊娠、出産、育児、家事。この14年間、どの場面においても、「夫らしさ」「妻らしさ」のクラシカルな「型」があった。「母親らしさ」「父親らしさ」の模範解答のような型、それにはまろうと頑張ったり、はまらずにもがいたり。そうしている中で、型にはまることより、自分の型を作ればいいのだと気づいた。

「すてきな夫婦像」「すてきなお母さん」「すてきなお父さん」。そう聞いた瞬間にみんなの頭にうかぶイメージ。試しにGoogleで画像検索してみて。なんとも嘘くさい空明るいレンポジがずらっと並ぶ。CMではいつだって偽物の夫婦が笑いかけてくる。私たちは騙されない、流されない、そんなの全然すてきじゃない。

さて、わたしたちはこの先いったいどんな90歳になってしまうのか。個性的になりたい訳じゃないし、悪目立ちはしたくない、すてきな夫婦にはなりたいんだけど、多分世の中から見たら変わり者の夫婦になってしまいそう。とりあえず、90歳で2人とも元気だったら、キャロットケーキをウェディングケーキにして結婚式をもう一回あげよう。馬鹿馬鹿しく、私たちらしく。90レイヤーのウェディングキャロットケーキを孫やひ孫にもふるまおう。長生きしたい理由がみつかったので、今夜も野菜いっぱいの夕飯を作るのだ。

 

 

 

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