口紅をひくかわりに、じぶん色のバッグをぶら下げる。
6月の東京は、曇り空もビルも道行く人並みもモノトーン。グレーな世界に埋もれる心地よさに流されて、モノトーンのものばかりで身を包んでいると、気づいたら心までグレーになっている。
そんな梅雨の季節の憂鬱に飲み込まれてしまわないように、まいにちの中に、色々な工夫を仕掛けることにしている。ちょっと先の夏に楽しみな予定を入れたり、ちょっと斬新なケーキのレシピを考えてみたり。
ある日ふと、青色にインスピレーションを感じて、「あ、イルカの色のまつ毛をつけたい。」という衝動にかられた。小学生の頃にイルカがすごく好きだったこと、毎日イルカの絵を描く練習をしていたこと、可愛いキーホルダーを持っていたことをふと思い出したからだっけ。とにかく、何だか「まつ毛が青いのってまつ毛の上にイルカを飼ってるみたい」と思いついた。馬鹿げているし、くだらない欲望だ。けれども、そんな欲望をひとつ掲げるだけで、自分の内側からパワーがみなぎる感じがするから不思議。
「これが食べたい」「こんな服が着たい」にときめきを失わない限り、生きてる意味に悩んだりすることはないんじゃないか?これこそがRomantic Foodies。言葉にすると野暮だけれど。
そう、Romantic Foodiesという謎の店では、言葉にすると野暮なことを、手触りのあるモノに変えて届けている。Foodie's Tote Bagもそのひとつ。ふだん着の日、なんでもない日だって、サラっと肩にぶら下げるだけで、まるで口紅をひくように「なんでもない日」を一瞬で彩ってくれるバッグが欲しかった。
色選びに悩んだら、好きな食べ物をおもいだしてみて。アイスクリーム屋さんでフレーバーを悩むみたいに、ワクワクしながら。
「どんな色にしよう?」の悩みは、世界一幸せで能天気な悩みとも言える。そんな悩みこそ、今の時代に必要な悩みかもしれない。ネットの海の中、レビューを比べたり、○○診断とかブルベとか、イエベとか、排除法で似合うものを見つけることに疲れちゃった人にこそ、おすすめしたい、実用バッグ。
スイカの下の部分のような淡いピンクと、鮮やかなグリーン。その名もスイカバー。
「スイカバー、好きだったな。」そんかノスタルジーな気持ちをきっかけに、似合わないと思っていたピンクにも挑戦できるかも。
チョコミントは夏になると密かにチョコミント党に所属する、私のために作った。チョコミントって好き嫌いがパキっと別れる味なので、この色を選んでくださった方とはその好みが一致したと勝手に思って、嬉しくなっている。好きな人は強烈に好きなチョコミント。「好き」の気持ちは時に大胆な冒険をする勇気をくれる。
ズッキーニケーキは生成りにグリーンが新鮮。知的でアクティブなあの人に似合いそう、と勝手なイメージモデルを指名してデザインしてみたり。
雨に負けそうな日は、いっそ雨に負けよう。雨と同化するブルーベリーのバッグを合わせる。
色選びは自分をみつめるレッスンとも言えるかも。いちばん自分らしい色って?自分だけのストーリーがある色って?
「この色しか似合わない」「こんな色で目立つの恥ずかしいな」そんな謙遜を、ぜひ今すぐ捨ててみることをおすすめしたい。自分らしい色でビビットに生きたい、という大袈裟な願いを密かにバッグに込めて、しれっと軽やかに街を歩こう。
6月の梅雨空。虹を肩からぶら下げるみたいに、トートバッグをぶらさげよう。マスカラの色に、マニキュアの色に、靴下の色に。密かな自分だけの夢と希望を散りばめて。
どんなに落ち込んだって、自分の心の中に、カラフルな虹をいつだって自家製できちゃう、そんなゴキゲンな人でありたい。本当におしゃれな人は、そうやって身につけるもので自分の機嫌をとれる人なんじゃないかな、と思うこの頃。私が今まで人生で出会った中でとびきりおしゃれな人、Romantic Foodiesのデザイナーのnamico 。彼女は昔から自然にそれをやっている、言語化をしないところがクール。
朝起きて、その日その瞬間の感覚に耳を澄ませ、自分の中にあるインナークローゼットから、その日の自分らしさを取り出す。服は溢れると困るけれど、心の中のクローゼットは溢れても困らないから、たくさんの引き出しがあっていい。カラフルなインスピレーションをたくさん集めて、自分だけのクローゼットを満たそう。そしたらきっと、どんな色でも似合う人になれるはず。 urara