家族ができて、はじめに暮らした部屋には大きな窓があって、目の前に桜の木があった。真冬に子どもを産んで、幸せなのに孤独で不安で、夜は長く春は永遠にこないと思った。あのときほど桜が来るのを心待ちにしたことはなかったし、きっとこれからもない。

そんなことを思い出しながら描いた絵。過去の思い出のキッチン。今住んでいる家のキッチン。田舎のキッチン。そして憧れの未来のキッチン。ごちゃまぜに。桜の咲く季節に、心踊るようなピンクの本を作ろうと思いついて、いちばん始めに描いた絵。
桜を閉じ込めた「桜寒天」

桜の塩漬けを買ってきたら、水につけて軽く塩抜き。小鍋でお湯を沸かしたら、寒天パウダーを溶かす。シロップで風味づけして、バッドに流し入れて、桜の花びらを浮かべる。

粗熱が取れたら、冷蔵庫で冷やすだけ。とっても簡単な桜の寒天。

春のよろこびを、透明な寒天に閉じ込めて。舌先よりも、目で味わいたいのが、桜の味。
桜の香りは、独特だし、正直そんなにおいしい味じゃない。お腹にもたまらないし。寒天も、桜も、とりわけ大好物というわけではないけれど、春の味を子どもにも味見させたくて、この寒天を作るのだ。
ほろ苦い、春の味わい。「野ぜりとたらの芽のサラダ寿司」

春先は、野せりも旬。力強い香り、シャキシャキと噛み締める山の味。

野ぜりはザクザク刻む。たらの芽は、軽く茹でるだけ。
炊き立てのお米を寿司桶に移して、余熱が少し取れてから米酢とほんの少しのメープルシロップを回しがけ、野ぜりと白胡麻を入れてあえる。
たらの芽を散らして、塩抜きした桜の花をぱらり。気取らない、ふつうの日のサラダ寿司の出来上がり。

別添えで、カツオとアボガドを。味付けは醤油のみ。サラダ寿司を食べたい日が増えてたら、いよいよ春が来たな、と思う。
今だけのおいしさ。ワカメの新芽とタラの芽のあえもの。

3月は新物のワカメも食べなくちゃ。ベビーリーフのように柔らかなワカメ。食べやすい大きさに切る。蒸し器でタラの芽と、なめこを蒸す。ボウルにワカメ、タラの芽、なめこを入れて、米酢とほんのり蜂蜜で甘みをプラス。塩を少々、味を整えたら出来上がり。
春にんじんのキャロットケーキは丸型で。

そしてもちろん、キャロットケーキも。にんじんを切ると、そのみずみずしさに春を感じる。相変わらず、3日に1度は焼いている。我ながらよく飽きないと思う。

レシピは先行販売中のGood Morning Sweetsに。

先日、ついに、発売した新刊 Good Morning Sweets。
さっそくこの本を読んでくださった方から、宝物にしたいメッセージが届いた。
だいぶ自分勝手な解釈だけど、そのメッセージは20代の自分から届いた手紙のようでもあった。
料理する余裕もヒマもなく、暮らしよりも仕事が絶対優先。常にメンタルは恋愛に振り回され、いつだってチョコレートが食べたい、なんか孤独。無性に孤独。そんな20代だった。(まさかこんなふうにレシピを書くような人間になるなんて思いもしなかった)
その頃の自分に、何かを伝えたくて、いつもレシピを書いている。そして、この本で伝えたかったことは、レシピや配合、作り方の詳細だけじゃない。この1冊の中に描いた、小さな世界。魔法のユートピアへ、ちょっと遊びに来ませんか?というささやかなお誘い、のような。
とある女の子から届いた感想を読み、そのお誘いが伝わった、と感じた。嬉しくて、本を売るための販促活動のやる気もなくなってきてしまった。もうこれがゴールでいいじゃないか、と。いやいや、それじゃいけない、在庫を管理するスタッフの悲鳴が聞こえてくる。そういうわけで、宣伝しなくちゃ。宣伝させてください。

amazonや他ECショップでの販売はありません。Romantic Foodiesでのみ、絶賛発売中です。
(4.12〜は限定書店にて販売開始。詳細はこちら)
ぜひ。桜の季節、ピンク色の扉を開けてみてください。小さな甘い世界で待ってます。
urara