Sweet News -December-

Sweet News -December-

特別な日のキャロットケーキができるまで。ちょっと長め。

こんにちは。Romantic Foodiesブランドディレクターのuraraです。

先日、はじめての著書の色校正が届きました。

校正紙を手にとり、オレンジの色味を確かめながら、いよいよ、本ができる実感が湧いてきます。著者として、同時にアートディレクターとしても、一冊の本づくりは、私にとってまったくの新しい経験でした。

はじめてのレシピ本の制作もふくめ、2022年を振り返ると、大きな変化の中で、新しい出会いに満ちた一年でした。

6月に会社を辞め、フリーランスのアートディレクターに。そこで出会ったのが岩手県の牧場、しあわせ牧場さん。こちらの牧場で生産される商品のブランドデザインを作らせていただきました。

ネーミングからパッケージまでを担当させていただいた商品「やぎみる」。そう、ヤギのミルクなのです。

日本ではなかなか、馴染みの薄いヤギのミルク。最初にお話をいただいたときは、正直「え?おいしいの?」という抵抗感がちょっぴりありました。昔、旅先で飲んだヤギミルクが苦手な味だった思い出もあって。

(ヤギちゃんごめんね。)

しかし、その抵抗感は、牧場のオーナーのお話を伺い、一瞬で吹き飛びました。

「うちの牧場のヤギたちは、飼育小屋に閉じ込めることなく、365日放し飼いで暮らしています。野山の草木を食べているので、季節を通してミルクの味も変わるんですよ。夏は青草の爽やかな味、秋冬は干草を食べて、まったりした味になるんです。」

季節が変わる、食べる植物が変わる、ミルクの味も変わる。

そうか、グラスフェッドミルクって、自然のめぐみがダイレクトに入っているのか。グラスフェッドミルクのことは知っているつもりでいたけれど、牧場の方の生の声を通して、初めてその本当の価値を理解できたような気がします。

そんなヤギのミルクにワクワクしながら、いざ牧場へ。

まるでおとぎ話のような景色。広大な牧場の中、ヤギたちは、群れをなし、ひたすらにむしゃむしゃと草を食べ、自由気ままに暮らしていました。人間が手入れすることなく、動物たちが草を食べることで、自然に開かれる草原。はじめて目にする美しい景色。

ヤギの写真を撮っていたら、ヤギと仲良くなってしまった。近づいてきたヤギに、リボンをつけてパシャリ。可愛い!

ヤギの群れの中に混じり、ヤギに語りかけ、たまにヤギに服を食べられたりしながら、ヤギと心を通わせた気がします。

動物が好きだ。自然も好きだ。自分の中にある、シンプルで大切な気持ちを取り戻すひと時。

こちらは牧場のオーナーの前田さんと、ロバのポッキー。

写真のとおり、動物への愛に溢れた素敵な方。

前田さんとお話している中で、私がキャロットケーキが好きなことを伝えると、「じゃあ、うちのパティスリーでキャロットケーキ、作りましょうか。牧場でにんじんも育てますか?」とおっしゃってくださったのです。もしかしたら冗談半分だったかもしれないけれど(笑)

私はその瞬間に、「ヤギミルクのキャロットケーキ、作りたい。」と作り手魂に火がつきました。ヤギのミルクでクセのあるフロスティングを作って、ケーキにのせたら、きっと美味しいに違いない!と。

(牧場でにんじんを作ることは種まきが間に合わず、今回は諦めました)

そんなふうに、牧場の真ん中で始まった、キャロットケーキプロジェクト。

クリスマスを前に、ついにケーキが完成しました。

ハートのデザインに、ヤギへの愛を込めて。ヤギクリームのフロスティングを贅沢にまとったホールケーキです。

そして、このケーキを作ってくださったのは、パティスリーレドシェーブルの千枝シェフ。これまでにパティシエとして積まれてきた熟練の技術と、ヤギミルクのスイーツを数々と手がけてきた経験値あって、ケーキが形になりました。

千枝シェフがこのケーキにこめてくださった最大のアイディアは、香りのセレクト。フロスティングのヤギクリームの香り。そしてケーキ生地のシナモンの香り。この2つの個性を繋ぐのが、オレンジピール。このオレンジピールの魔法で、三位一体の複雑で繊細な味わいが生まれました。

生地にもヤギミルクを練り込み、すりおろしにんじんをたっぷりと使って、しっとりと。この一口から、ヤギクリームのおいしさ、牧場の魅力を届けたい。そんな思いで、何度も試作を重ねてたどり着いた味です。

特別な日のための、スペシャルなキャロットケーキ。華やかな12月の気持ちに寄り添うケーキになれたら、と願いをこめて。

最後に、念のため、誤解をしないようにお伝えすると、このケーキは、私の著書のレシピとは別のものです。

自分一人では作れない、繊細で贅沢なスペシャルキャロットケーキを千枝シェフに作っていただきました。とてもワガママな企画を形にしてくださった、前田さん、千枝さん、そしてヤギちゃんたち、ありがとうございます。

1年間頑張った自分自身のための、ご褒美ケーキ。この個人的なおいしさを、誰かと共感できたら嬉しいなと思い、少しの数ですが、お届けします。このケーキを通して、新しいおいしさが、広まりますように。Merry Christmas! urara

※12.3土曜の夜8時から数量限定で販売いたします。