真っ白な街、タスコを目指して。

成田から12時間少し。メキシコシティに到着し、タクシーでホテルに向かう。車窓から見るはじめての南米の景色は、意外にも見慣れたアジアの喧騒にちょっと似ている。たくさんの人で溢れるローカルマーケット。雑多に山積みされる商品。ホテルのチェックインを済ませ、お土産市場へ。メキシコシティでの時間はわずかなので、足早にチェックする。カラフルなメキシコ雑貨に心躍りつつも、ここは冷静に。タスコへの期待を高め、メキシコシティを後に。
はじめての長距離バスの移動にドキドキだ。

旅は好きだけど、不安はもちろん人並みにある。根っからのおっちょこちょいだし。それでも好奇心が勝って、いつもふらっと旅に出てしまうのだが。
さあ、シルバーマーケットへ繰り出そう。
無事にバスに乗り込んだ。タスコまでは3時間半。前の晩は時差ぼけで寝れなかったから、ぐっすり眠った。目覚めたら、もうタスコ。遠くの山に、白い街が見えてきた。

昔行ったスペインのアンダルシアの景色を思い出す街並み。かつてスペインの植民地だったメキシコの面影を残すコロニアル調の街なみ。その昔、銀の鉱山で栄えたこの街は、「シルバータウン」とも呼ばれている。昔から今も、たくさんの腕の良いシルバー職人がいるそうだ。そして、今日は土曜日。週に一度のシルバーマーケットの日!

噂通り、土曜日のシルバーマーケットはすごかった。数え切れないほどの露天が軒を連ね、数え切れないほどのシルバーアクセサリーが並ぶ。

大通りにも、そして小さな路地にも、みっちりと。目の中に入ってくる、シルバー、シルバー、シルバー!宝探しのはじまりだ。
思いのほか、心地よい?グラシアスが飛び交うマーケット。
見渡してみると、日本人は私だけ、アジア人も少ない。たくさんのメキシカンたちがアクセサリー選びを楽しんでいる中に、紛れてみる。海外にくるといちばんのストレスが金額交渉。でも、タスコの街は良心的。はじめからちゃんと値札がついている商品も多く、外国人だからといって値段を高くぼられることもない。そのうえ、押し売りもない!みんな気持ちよく、グラシアス!と笑顔で迎え入れてくれる。そして、買わなくてもグラシアス!と笑顔をくれるのだ。東南アジアのマーケットとはまったく違う!メキシカンスタイルが心地良い。「メキシコ=治安の悪いイメージ」は早々にふっとんだ。

ただ、無数のアクセサリーを前にしても、欲しいものがたくさんある訳ではない。というか、見れば見るほど、意外にない。だからこそ、運命と思えるデザインを見つけたくて夢中になるのだけど。
理想のコラソンを探して歩き回る1日目。やっと、一つかわいいコラソンに出会えた。第一ときめき発見。聞いてみると、そのネックレスは、作り手の職人さんによる一点もの。複数欲しいことを伝えると、明日までにたくさん作ってくれるという。「明日はこの場所じゃなくて別の場所で売ってるから、見つけてね!」と口約束。さて、どんな展開になるだろう?
天気はあいにくの曇り、たまに雨。雨季のメキシコは意外に寒くて、薄手のダウンでもちょうどいいくらい。好奇心のまま歩き回り、食べることすら後回しの1日目。へとへとに歩き回り、ホテルに戻る。土曜の夜は騒がしく、近くのクラブから大音量の音楽が流れてくる。そのうえ、時差ボケ、旅の興奮でなかなか眠れない。それでもどうにか目を閉じて、朝を迎えた。目覚めると、美しい景色が広がっていた。

旅の疲れも吹き飛ぶ美しさ。東京からここまで遠かったけど、どうにか無事についてよかったな。メキシコにきてからはじめて心から、ほっとする。
美しい、シルバーの迷宮、タスコで。
小さく、美しい街タスコ。この日から私は、とにかく連日、小さな街をぐるぐると歩き回った。

まるで白い迷宮のように、張り巡らされる路地、石畳の急坂。


ビートルは、車に興味のうすい私が、唯一昔からときめく車。


青空、白、黄色いパペルピカド。


GoogleMapにのっていない。コラソンにたどり着くまでの宝の地図。

