Column − 6月の広島で平和を願う。

Column − 6月の広島で平和を願う。

6月のある晴れた日に向き合う、広島のこと。

これまで広島に行ったことがなかった。つまり原爆ドームにも行ったことがなかった。広島出張が決まっても、直前まで行くことを躊躇するほど、ずっと向き合うことが怖かった、原爆について。それでも「やっぱり行かなくては」と背中を押されたのは、最近とてもハマっている大好きな朝ドラ「虎と翼」の影響。戦前戦中戦後の時代を生きる登場人物たちを見ながら、やっぱり、戦争にちゃんと向き合わなくちゃ、と思い直した。これから書くのは、そんなミーハーな大人の独り言だ。

ここは日本?世界じゅうの人が集まる、平和記念資料館。

あれ?海外に来たんだっけ?と錯覚するほどに、外国人観光客であふれる平和記念館。かつての被曝者蝋人形の展示も無くなり、2019年にリニューアルした平和記念資料館は、建築物としても美しく、現代美術館のような佇まいだ。

外国人観光客に紛れながら、まるで自分もそのうちの一人になったかのような錯覚を覚える。その錯覚が良かった。日本人として、母としての視点ではなく、ちょっと俯瞰の視点を掲げ、この展示を見つめることにする。感受性を守るために。

あえてライトな気持ちで、足早に資料館を巡る。

結論として。やはり、一度は行かなきゃいけない場所だった。

展示方法はかつてのような生々しさは排除されながらも、じゅうぶんに原爆の残酷さに没入することができるようにデザインされていた。日本人として誇りを持ち、世界中の人に見てほしい、来てほしい、と願う素晴らしい資料館だ。

100%で向き合うことができなくても、戦争に「没入」することの意味。

やはり、100%全力で真正面からすべてを見つめることが、私にはできなかった。それほどに、原子爆弾は恐ろしいもの。知っていたつもりのことも、想像を超えて体感させられる。

この先また広島を訪れるなくちゃいけない、と思った。60歳の私はどう感じるか。こどもたちはどう反応するか。いつがベストかは正直のところ、わからない。でも、遅かれ早かれ誰しもが人生で一度は、戦争に「没入」しなければいけない、と思う。子供の頃に見た「火垂るの墓」で、自分のなかの「戦争反対」の絶対的価値観が作られたこと。大人になってからフルメタルジャケットを観て違う目線での戦争を疑似体験したこと。そして今日広島で、原爆の残酷さに数時間だけれど、没入したこと。

外に出ると、天国みたいな景色が広がっていた。

 

原爆の恐ろしさに打ちのめされ、暗い気持ちで資料館を出ると、原爆ドームが見えた。

夕暮れ時の、太陽の最高のライティングで照らされた、原爆ドーム。平和とはなんて美しいのだ。月並みだけど、心底そう思った。

各国から訪れる家族たち。

知らない国のこどもたち、若者。

ここにいる誰一人、戦争を望んではいないはず。まるで天国。かつて多くの人が命を落としたこの場所に、世界中から平和を願うひとが訪れる、美しい街。

世界の真ん中って、広島だったんだ。

東京より、ニューヨークより、この場所が世界の中心だ。そんなことを思った。ここを世界の中心と捉えるかぎり、きっと平和を願う「人類愛」は失われないはず。

「こんな思いを他の誰にもさせてはならない。」

これは、被爆者が辛く悲しい境遇の中で思い悩み、「惜しみ」や「拒絶」を乗り越え、紡ぎ出した悲痛なメッセージです。

その心には、人類の未来を見据えた「人類愛」と「寛容」があります。

 

「人類愛」という言葉を心に刻もう。この言葉をお守りにしたら、自己愛で悩みがちな現代人がいい意味でバカらしく思えるかも。

いつも世界を俯瞰でみつめて。この時代この土地に生まれたことのラッキーを忘れない。

 

残酷を目にしても、恥ずかしながら食欲は失せない。夜ご飯には1人、チョコレートパフェを。昭和からあるというデパートの上の喫茶店のパフェ。昭和の家族たちは、どんな気持ちでこの夢のようなパフェをつついたかな。2024年の私は、罪悪感なしにパフェをつつくことはできない。価値観は移ろい、時代はどんどん新しくなる。

デパートを出たら、思いがけずお祭りだった。街は大賑わい。

今宵のこの瞬間、「今」を全力で楽しむ若者。

こども。

赤ちゃん。と、パパ。

遊んで、食べて、笑って、恋したり、しなかったり。

かつてたくさんの命が失われたこの場所で、2024年のある夜、たくさんの命がキラキラにはしゃいでいた。

 

生きてるって、かわいい。生きてるって愛しい。これもまた人類愛かな。

見ず知らずのひとに人類愛を感じながら、ふと、目が覚め、東京で留守番する、かわいい娘たちを思った。

「ニュージーンズは世界を救わないけど、プリキュアは世界を救うヒーローなんだよ。」

これはプリキュアに夢中の7歳が、ニュージーンズに夢中の13歳の姉に張り合って、いつも言う決め台詞。面白いこと言ってるな、くらいにしか思ってなかったけれど、わりと大事なことのかもしれない。この世界にはヒーローガールが必要だ。いや、でも、ニュージーンズでも世界は救えるのか?とにかく、それぞれのやり方で、それぞれに、世界をポジティブに変えられる人間に育っておくれ。育てなくちゃ。ここに堂々と、子育ての高望みを掲げよう。どうなるかわからない100年先の未来にむけて。そしていまなお起きているガザでの虐殺行為に反対を示し。戦争反対。urara